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醒睡笑
三不文字
元日に羹おいはふ処へ、数ならぬ者礼に来る、亭主膳お出せといふに、そのまゝすへたり、亭主うれしげに、積善の余慶じやなど感ずるお聞き、さてはかやうに下には芋大根お盛り、中に餅、上に豆腐くゝたちお盛るおば、積善のよけいといふ事よと覚えて立ち、件の者、又ある方へ行く膳出たり、見れば今度のは豆腐とくゝたちお下に盛り、中に餅、上に芋大根お盛りたり、箸おもちてほめけるは、さても此余慶の積善は、一段あたゝかに出来まいらせ候よと申しけり、○按ずるに、雑煮の事は、歳時部年始祝篇四に在り、参看すべし、