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古今著聞集
十八飲食
醍醐大僧正実賢もちおやきてくひけるに、きはめたるねぶり人にて、もちお持ながらふら〳〵とねぶりけるに、まへに江次郎といふ恪近者の有けるが、僧正のねぶりてうなづくお、われに此もちくえとけしき有ぞと心得て、はしりよりて手に持たるもちお、取てくいてけり、僧正おどろきて後、こゝに持たりつるもちはと、尋られければ、江次郎、其もちははやくへと候つれば、たべ候ぬとこたへける、僧正比興の事なりとて、しよにんにかたりて、わらひけるとぞ、