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明良洪範
二十四
春日局〈○中略〉神祖〈○徳川家康〉以来御鷹野先にて、切剛飯お給ふ、御成御延引の時は、皆々へ配り物大奥へも給へり、春日局申されしは、剛飯にては当坐に喰ひ尽せり、餅に練らせて給ふべしと、夫より餅に舂せて配る事に成し、猶廟〈○徳川家忠〉の御病気にて、御鷹野の無りし時、例の赤飯餅(○○○)は練らぬかと、春日局尋ねければ、伊丹播磨守答へけるは、御病気故入らざる故蒸させ申さずと雲りければ、局怒りて大神君以来、御成御延引にても仕来りたる者お止るは、不吉の例也、費と雲は海川へ捨たり、或は泰山府君の法とて物お焼捨る類也、其赤飯餅は皆々へ給るなれば費にはならず、我等式の竈と違ひて、賑かなるお公方家の御台所と雲はれし、此例お以今に御譜代餅(○○○○)と雲て、毎月御舂屋より奥方へも給はれり、 ○