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菓子は、くわしと雲ふ、原と草木の果実お用いて、従食と為しヽものにして、桃、栗、梨、柿、柚、柑、橘瓜等の類お謂ふ、後に唐菓子に対して之お木菓子と雲ふ、又水菓子の称あり、唐菓子とは支那の製に効ひたるものにて、梅枝、桃枝、餲粘、桂心、黏臍、饠饆、〓子、甫喜お八種の唐菓子と雲ひ、其他餅腅、餢飳、糫餅、結果、捻頭、索餅、粉熟等あり、是等の菓子は概ね糯粉、小麦粉、大豆、小豆等の類お以お以て製し、酢、醤、塩、胡麻等お加へ、又は甘葛汁お加へたり、餅腅は餅中に裏むに、鵝鴨等の子、并に雑菜お煮合せて截りたるものにして、餢飳は油にて煎たる餅なり、而して結果索餅等は形状お以て名とせり、後世、沙糖お外国より伝へし以来、菓子の製為めに一変し、一として沙糖お用いざるは無きに至れり、即ち当時の菓子には、餅菓子、蒸菓子、練菓子、干菓子、南蛮菓子等の別ありて、餅菓子は、餅製の諸菓子お謂ひ、蒸菓子は、饅頭求肥の類お謂ひ、練菓子は、羊羹、外郎餅の類お謂ひ、干菓子は、煎餅、落雁、白雪糕等の類お謂ひ、南蛮菓子は、かすていら、かるめいら、有平糖、金米糖等の類お謂ふなり、