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嬉遊笑覧
十上飲食
古へ菓子は木の実の外には、からくだものとて、漢土の寒具の類お学びて造れるもの種々あり、寒食は冬至より百五日お、三月の節とす、即晴明なり、漢土は旧例にて、此日火お焚ざれば、前日より種々の菓子お調へ置て食ふなり、あたゝかなる食ものなければ、これお寒食と雲ふ、寒具はその備への食物なり、本草和名に、沙糖お載たれども、薬剤に備るまでにて、漢土より渡れるはいと希なるべし、和名抄に、是お載ざるにても知べし、然らば菓子などに用る事あるべからず、