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醒睡笑
二吝太郎
濃州の岐阜に不動院とて真言宗の老僧あり、正月の菓子に、国の名物なる枝柿三つすえて出し、其分にて毎年時宜調ぬるお、おどけ者よく見知て、あまりにしはきはたらきおよく見、例の菓子出ける時、あら珍しや賞玩申さんと、一つならず二つ迄くひけり、院主は苦々敷事におもはれ、あのていならばみなくはれん、さらば愚僧も相伴仕らふと、とりてくはれける心の内ぞおかしき、