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東雅
十二飲食
糕〈○中略〉 通雅によるに、環餅捻頭饆饠餺飩等の如き、かしこにては詳ならざりしと見えたり、我国には、猶今も是等のものゝ遺制はある也、我〈○新井君美〉むかし御厨子所より、公にまいらせしものどもお見る事おも得たりき、それが中に、俗間にも其製のなおのこれるもあるなり、団喜は俗にだんごといふものゝ形の如く、餡といふものおもて裹める也、粘臍は俗にへそといふものゝ形是也、餲粘はもとこれ蝎といふ虫の形の如くなるおいひけり俗にさヽもちといふものゝ中に、其形なるものある也、饆饠はひら也、俗に花弁といふものゝ形に似て、〓子は俗に芋の子などいふものの如くなる也、是等の事共しるしぬるは煩しけれど、異朝にしては、既に其名もさだかならぬもの、我朝には猶ありしまゝに、其制の遺りぬるは、いとめづらかに覚しが故也、