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明君遺事
一或時昼頃より能役者共へ、囃子被仰付、執事中お始め御手廻りの面々へ迄、勝手次第見物に出べしとの事也、然るに執事何某御近習目付お以て申上ぐるは、今日御囃子物見に仲間の者共罷出は、餅菓子(○○○)被遣可然旨窺ひければ、甚御立腹○山内豊常有て、仰けるは、此時節自身さへ左様の自由は、おもひも寄らず、筋なき事ないひそ、又もてなしなくて快からずば、向後見物無用也、此方より見物頼にあらずと仰也、〈○下略〉