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貞丈雑記
六飲食
一十字(○○)と雲は餅のこと也、東鑑に賜十字、又供十字、又食十字などゝあるは、何も餅の異名也、昔晋朝に何曾と雲人、字は穎孝と雲、此人親に孝行にて行儀正しき人なりしが、奢侈者にて衣服諸道具飲食、皆花麗お尽せり、蒸餅お食するに、蒸餅の上に拆て、十字お作ざれば、食ざりしと也、此故事お以て、餅お十字と雲也、拆て十字お作とは、餅の上に小刀めお十文字に入て、くひよき様にしたゝめたるおいふ也、右何曾がことは晋書第十三巻めにみえたり、蒙求にもみえたり、