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守貞漫稿
後集一食類
饅頭今の饅頭、表は小麦粉お皮とし中に小豆餡お納る、小豆は皮お去り砂糖お加ふ、砂糖に白黒の二品あり、白お白餡と雲ひ、黒おくろあんと雲ふ、〈○中略〉昔は諸国ともに菜饅頭(○○○)廃し、其後は塩饅頭(○○○)と雲て、小豆餡に塩お加へたり、小豆も皮お去ざる者多し、今も江戸の江戸橋等に売之店あり、鄙人食之のみ、近世は鄙といへども皆専ら砂糖饅頭(○○○○)也、文化以来漸々如此也、〈○中略〉蕎麦饅頭(○○○○)は、江戸近年の製なるべし、そば粉お以て皮とし、舶来霜糖お以て小豆餡お製し精製也、形小にて貴価也、〈○図略〉薯蕷饅頭(○○○○)、じやうよまんぢうと雲、京坂近年の製なるべし、餡同前上製也、山のいもお以て皮とす、以上二品は茶客専用する所なれども、奢侈の時なる故に凡の時にも食之、朧饅頭(○○○)、始め製する時皮に厚くし、蒸て後薄く表皮おむきされば、皮はだ羅紗の如くになる、是おおぼろ万十と雲ふ、江戸には製之こと甚だ希也、