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宗五大草紙

人の相伴する事一点心の時参様、〈○中略〉まんぢうのくひやう、一取ておしわりて、なからおば残たるまんぢうの上におきながらくふべし、さて残たるおもくひたくばくふべし、くるしからず候、年寄たる人は、丸ながらもくふべし、又も二もくふべし、又作善の時は、僧達はさばの心にて、ちとちぎりて右のさらに取置候、いづれも点心同前に候、〈○中略〉又いにしへは椀に、まんぢう四入候様に覚候、三ならべてわんに入、ひとつ上に置たると覚候、定て覚違にて可有候、〈○中略〉まんぢうのこきり物、二色一色にても不苦候、此こお汁へ可入、但入候はぬも不苦候、若き人などは、入候はぬも能候、年寄はかうのものなどお、さいのやうに、まんぢうにくひそへたるも能候、若人はめゆ〳〵有べからず、〈○中略〉一饅頭はめし椀に入て、しる椀おふたにし候、ふたのしるわんにて、汁お可請、さてこお可入、若人などはしるおすはぬも能候、こおも不入共なり、年寄は入て能候、さてむぎのすはり候時、きうじの人盆お揃て出て、まんぢうおうつし候、其めし椀に麦の汁おうくる也、まんぢうの汁の入たる汁わんおば、配膳の人取也、〈○中略〉一同時〈○一献の時〉饅頭のすはり様、そへ肴あるべし、くひやう、こお先汁へ入べし、又入候はぬもくるしからず、若人などは何となく入らぬが能候、汁おもすひ候はぬも不苦候、年寄は何としたるもくるしからず、先まんぢうお一取ておしわりて、なからおば残のまんぢうのうへに置てくふべし、又残おもくひたくばくふべし、丸ながらくふもくるしからず候、年寄などは二もくひ候、いにしへはまんぢう出候へば、料紙お引たるとて候、是は残おつゝみて、懐中せよとの心也、今はさやうの事なし、今も年寄たる人などは、残おとりて懐へ入られ候、