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守貞漫稿
後集一食類
羊羹羊羹の古製小豆一升砂糖准之、小麦粉五勺、鍋墨少々加へゆるく煉り合せ、蒸籠に掛け、さまして後に細長く四角に切る、色黒し雲々、古製は此ごとく甚粗製也、今製の蒸羊羹の類にて、古の砂糖羊羹(○○○○)也、〈○中略〉今製煉羊羹(○○○)赤小豆一升お煮て、あくお取り去ること三四回、其後皮お去り漉粉となし、唐雪白砂糖七百目、是も煮てあくお去り、乾天二本半お煮て漉之、煮詰製すお煉羊羹と雲、同粗製のもの同製、唯白砂糖三百目お用ふ、江戸にて近年是亦行れ号て浪華羹(○○○)と雲、蓋彼地に始め製すに非ず、唯猥りに号之のみ、右の煉羊羹浪華羹ともに、赤小豆お専とすれども、或は白大角豆或は八重成お以て製すもあり、八重成は大坂に無之歟、又蒸羊羹(○○○)も行る、煉蒸及び浪華羹ともに長六寸厚と幅格一寸お一棹とす、蓋家により幅お広く薄くするもあれども、大略同量也、煉羊羹一棹価銀二匁、浪華羹、蒸羊羹、各一棹価銀一匁、三都ともに同価也、又京坂は上製といへども籜包お専とし、折お用ふこと甚希とす、蓋籜お巻て羹の左右にそへ、其上お包みて幅二寸余とす、江戸は希に籜包あれども、単に包みて広くせず、音物には折入お専とするなり、折入籜包ともに一棹二三棹入あり、京坂同之、