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おちばかご
夫かすていらは、其原阿蘭陀将来の佳品なり、予が先祖幸ひにこれお得て、常に茶菓酒肴として、是お嗜むに、不測に無病壮健となりしかば、紅毛人に懇にその秘方お乞求て製し、日日に是お用ゆるに、五臓お調和して、虚損お補理するの功あり、よつて老て衰へず、終に百余歳の天寿お保つ、其功験一々枚挙するにいとまあらず、故に時の人所望日々に多くて、その名遠近に聞えしかば、夫より世上に同名の類品お製すること火し、しかれども其本方は、他に知るべきにあらざれば、予が家伝の製品とは、格別の違隔あり、遮莫は、四方の君子先つ試用て、他製と等しからざるお、知り給へかしと雲、 御用ひやう御茶菓子のみにあらず寒気の節は、ふたものに入、沸湯さして御用ひ、暑気の節は、右に同じく、冷泉にひたして御用ひ、酒肴には、右に同しく、大根おろし山葵の類にて御用ひ、其外煮物のさし込、料理ものゝ取合、酒の二日酔によし、旅行にたづさへて、水のかはりによし、御進物箱入品々御座候、 外に極製花ほうる御座候、御試のうへ、御用奉希上候、 長崎直伝 〈京油小路通三条上る二丁目東北角〉万屋五兵衛製