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守貞漫稿
五生業
菓子店京坂は看板定る形無之、所欲の品名等板に書て釣之、唯暖簾は他店と異制也、家号及び其他お記すものは、白木綿に墨書し、間は紺無地木綿お以て交へ縫合すると図の如し、〈○図略〉江戸菓子店必ず此招牌お路上に出す〈○図略〉京坂無之、菓子蒸籠の形也、周り青漆中朱也、文字黒漆にてかく、飾積物に用ふ蒸籠、此台お除きしと同形にて大也招牌は小形也、江戸菓子店暖簾も他店と同形お専とする也、蓋昔は某大掾藤原某等受領お先途とし、受領の店は売ることも多かりしが、近世此店に粗製多きお以て、近来開店のものは受領お専とせず、某堂某亭某園などヽ風流の号お用ひ、又暖簾おも帆用の広木綿お白の儘にて粉引となし、某堂などと墨書する者多く、蓋名ある書家に乞て書之等の者多し、