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守貞漫稿
後集一食類
饅頭京坂市民先祖年忌仏事の時引菓子(○○○○○○○)、粗なるは虎屋の五文饅頭十お許り、美おなす者此朧饅頭お用ふ、価二分許の大形上製にて白赤黄等お交るもあり、多くは白と黄のみ也、杉赤みの柾目板お敷き、其上に此饅頭七つ、或は十許お置き、杉原紙にて包之也、蓋巨戸は折詰等にするもあれども、多くは紙包み也、 因雲江戸にては仏事等の引菓子には、下図〈○図略〉の如くなる杉折に、煉羊羹半棹、蒸菓子一、有平糖製一、価三匁五分、或四匁許りお麁とす、美なるものは、煉羊羹半棹、白煉羊羹半棹、蒸菓子二色各一、有平製一お入る、価五六匁也、〈○中略〉 文化六年刊本馬琴作の夢想兵衛と雲る戯述に、仏事のことお雲る条に、引物の菓子は一分饅頭三つ、米饅頭二つ大落雁一つ、花ぼろ一つ、一人七分にして雲々、上包の糊入紙紅白の水引雲雲と雲へることあり、四十年前には江戸にても紙包にて折お用ひず、菓子も麁製にて一人分銀七分許の物お用ひし也、