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嬉遊笑覧
十上飲食
和漢三才図会に載たる果子どもは、はるてい、まがり、ぼうる、〈みな花ぼうるの類なり、〉すはま、まめ飴人参糖、あるへい糖、〈毬のやうにふくらしたると、今いふだてまげも有り、〉かるめいら、〈今の製とは殊なり、すあめのやうに引たり、〉唐松、あはび、〈今大黒に供ふる七色菓子は、もと庚申の菓子なり此類にみどりといふあり、夷曲集に、ときはなる松のみどりも春くへば、今ひとしほの菓子のあぢはひと見ゆ、〉衣榧、〈源子かやとも雲なり、〉松の緑、〈上に出たり〉達摩隠、〈此も同類に今も有り〉ちまき、まんぢう、らくがん、白雪糕、粔籹糖(おこしこめあめ)、羊羹、外郎餅、求肥、加須底羅、糖花小鈴、〈糖花の小者とあれば、これ今の金米糖なり、然らば糖花とあるは、今の太平糖なるべし、後に小鈴といひしものは、霰餅に衣かけたるなり、名は同くて製かはれ〉〈るにや、今は是なし、〉煎餅、〈鬼煎餅なり〉松風、〈松風とはうらさみしきの義なりとぞ、裏の方白くして紋なければなり、〉美作米饅頭、大福餅、〈はらぶとなり〉金鐔、たんきり飴、打つ切り、豆板、大捻等なり、今のよき菓子どもは、大かたに昔、〈正徳五年〉なかりしものなり、求肥も元牛皮なるべけれど、いやしく聞ゆる故、文字おかへしなるべし、羊羹などおかへざるはいかにぞや、