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酒は、さけと雲ふ、神代に於て八塩折酒、甜酒等お醸造せし事、史冊に見えたれば、当時既に醸酒の法ありしお知るべし、而して応神仁徳両帝の朝、支那及び朝鮮より醸酒工の渡来せしより、醸法一変したるならむ、酒お醸造するには、常に粳米お以て原料とすれども、或は果実等お以て造るあり、近世其醸造の時お以て之お分ち、秋季に於てするお新酒と雲ひ、寒前に於てするお寒前酒と雲ひ、新酒と寒前酒との間に於てするお間酒と雲ひ、寒中に於てするお寒酒と雲ふ、又往時の醸造は、皆未だ純清ならざりしが、純良の清酒は、其発明近く徳川幕府の時に在りと雲ふ、