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梅園日記

茅柴葛原詩話前編雲、俗に村店の薄酒お、鬼ころし(○○○○)と雲、即村店圧茅柴(あふばうさい)と雲是なり、又茅柴酒とも雲べし、韓子蒼詩あり、飲慣茅柴諳苦硬、不知如蜜有香醪と、堅狐集に、茅柴の胸にこだわりて、下り難きお、悪酒に喩ふとなり、又後編に雲、茅柴、前編に解す、然るに事物紺珠に、茅柴、言如茅柴焰易過、薄酒也、此解甚佳なり、東坡詩、幾思圧茅柴、禁網日夜急、按ずるに、事物紺珠は、明の万暦十三年乙酉、黄一正が撰なり、これより百四十余年さき、皇朝文安甲子の序ある下学集に、茆柴濁醪也、一酔而即醒如焼茆柴火便滅とあれば、古く唐土の説あるべくおもひしに、果して宋人の錦綉万花谷前集に、韓子蒼詩、雲々、謂苦硬之酒、如茅柴火易過とあり、さて葛原、茅柴と圧茅柴お、同物とせしは誤なり、施注蘇詩雲、茅柴、乃村落所醸醨酒也、又黄州人造私酒、俗謂之圧茅柴と見えて、圧茅柴は隠し造り也、