[p.0689][p.0690]
梅園日記

濁醪誹諧新式に、とぶろく(○○○○)とあるお、誹諧通俗志には、酴醿漉と見えたれども誤なり、〈是より前、大和本草酴醿の下に、花〉〈白く千葉なり雲々、唐土には黄色あり、故に黄色のにごり酒お酴醿醁といふ、日本にて山川といふ酒の如くならんとあるは唐土のことおいへるなり、〉松岡怡顔斎の詹々言にも、とぶろくは酴醿緑の転語なりといへるお、其子の松岡洙が按語に、とぶろくは、濁醪の転語歟とある説あたれり、濁醪の文字ふるくよりあり、和名抄に、濁醪は毛呂美、本朝無題詩に、大江佐国玩卯花詩に、尋訪野村酔濁醪、又藤原周光屏風詩題に、石瀬之辺、有釣漁人、濁醪満樽、魚膾堆俎、新猿楽記に、酒濁醪肴煎豆、伊呂波字類抄太部、及び下学集に濁醪、天文二年、尊海僧正あづまの道の記に、醒が井の里にて、濁醪といへるおのみて雲々、節用集大全に、濁醪白酒也などあるお見てしるべし、もとは文選の巍都賦、恨賦等に出たる字面にて、杜甫、韓愈、白居易、李賀、杜牧、皮日休などが詩にもあり、