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三養雑記

三国一の醴韻会に、説文雲醴一宿熟也、又醴甜酒也とあり、甜酒はあまざけなり、一宿に熟すれば一夜酒ともいへり、按に神代巻に、木華開耶姫に皇孫幸之則一夜有身といひ、醸天甜酒嘗之といふこと見えたり、さて富士神社は祭神木華開耶姫なれば、一夜に娠ぬといふお、一宿醴によそへ、三国一またしら雪などゝ富士山にちなみある名おつけ、かつ木華は梅おいへば、やがて梅鉢の紋おもつくるなり、これ醴うる見せに〓おえがき、三国一しら雪醴としるし、梅ばちとよびて売ありくの縁なり、