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西遊記
続編三
濁り酒薩州には焼酒とて、琉球の泡盛やうの酒あり、京都の焼酒のやうに強からず、国中七八分は皆此焼酒にて酒宴する事也、常の酒は祝儀事などの贈りもの、あるひは儀式の宴会などにのみ用ゆ、是は皆京大阪辺より、積下す酒にて、其価猶高直也、彼国にてたま$〳〵$造る酒は、甚下品にして飲難し、夫ゆへに此焼酒お多く用ゆる事なり、琉球芋も酒に造る、味甚だ美なり、其外民家にては、黍粟稗の類皆焼酒に造るよしなり、余も其法お伝へ、彼地にて其道具お求め帰りて、今にいたり、折々は、我家の飲料お造る、其時々三升にても五升にても、入用ほどづゝ造る事なれば、甚だ自由にて且又風流のものなれば、大に賓客お饗応に足る、他国に此法なきはいか成ゆへにや、