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明良洪範
十一
島津中将光久は、弓馬槍剣は勿論、水練及び詩歌書昼算術謡曲等に至る迄、衆に勝れし人也、〈○中略〉泡盛酒は薩州にても造れど、盃に盛り上り、又板の上へこぼせば、其板お貫き通すなどは、琉球製には及ばず、此泡盛貞享年中より公儀へ献上并に諸役人へ進上物に成りければ、琉球製の物は、残りなく家中の者迄行届かざれば薩州製おまぜて配当せんと、掛りの人々評定しけるに、光久聞て、そは然るべからず、此泡盛は会宴の用には非ず、薬用の物なれば、将軍家始諸家にて重宝せらるヽ也、然るに功能薄き物お取りまぜて送る事詮なき事也、品お減んじて少々宛配当するとも、功能うすきお交て、配当する事なかれと雲れけると也、