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塵袋
九飲食
酒お造るおば、かむとも雲ふ、いかなる心ぞ、醸の字はさけおつくるなり、つくるともかむともよむ、昔は此の国人酒おつくるすべおしらず、くちに米おかみて水にはきいれ$〳〵$して、日お経てのち熟するとき、これお醴と雲ふ、のちの人うるはしくつくれども、昔になぞへてかむと雲ふ、大隅の国には一家も水と米とおまうけて、村につげめぐらせば、男女一所にあつまりて米おかみて、さかふ子にはきいれて、ちり$〴〵$にかへりぬ、酒の香のいでくるとき、又あつまりてかみてはきいれしものども、これおのむお名づけてくちかみの酒と雲ふと雲々、風土記に見えたり、これもむかし事にや、さけおあぐると雲ふ事あり、釃の字おあぐとよむなり、