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瓦礫雑考

酒大和本草に、向井元升雲、南都諸白為上品雲々、諸白者可為世界第一之上品といへるが如く、酒は南都お本とすることは酒粕に漬たる香の物お、奈良づけといふにてもしられたり、されど今は他国に美酒多し、凡酒の美悪は水によれり(○○○○○○○○○○)とぞ、酒造るに用ふる井は、かならず其辺に山ありて、井のかたはらには樹木なく、夜星の影おほく移るは水の性はげしくてよしといへり、五雑組にも、泉冽則(はげしければ)酒香といへるが如し、故に〈○中略〉星のかげよくうつる処、かならずよき水出ゆえに、井お鑿に先是おこゝろみ定てほるといへり、