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三省録
四附言
水藩の檜山氏が慶安五〈辰〉年四月十五日より同廿二日まで〈慶安五年より天保元寅年まで七十九年に成る〉水府の御宮別当なる東叡山中吉祥院が江戸より水戸〈江〉下りたりし時分の賄料請取品直段書付〈井〉入用おしるしたるものお見せたるが、其直段の下直なる事おどろく計也、〈○中略〉一酒五升 〈壱升に付〉代四拾文〈○中略〉一酒のかす 壱升 代弐拾文〈○中略〉またある人の持てるふるき引札お見るに、左之通〈げんきん御めじるし〉〓酒酢醤油直段附 〈鍛冶橋御門前南角〉小島屋嘉兵衛新諸白壱升に付一大坂上酒 代四拾弐文 一西宮上酒 同五拾弐文 一西宮極上酒 同六拾四文一伊丹上酒 同八拾文 一山路木綿屋 同九拾文〈○中略〉古酒壱升に付一大坂上酒 代六拾四文 一西宮上酒 同七拾弐文 一伊丹西宮上酒 同八拾文一池田極上酒 同百文 一大極上酒 同百拾六文 一大極上々酒 同百三拾弐文〈○中略〉この引札年号なし、いつのころに哉とおもふに、前に記しぬる吉祥院の水戸〈江〉下りし時の、諸色の直段のうちに、酒壱升四拾文とあり、援にもまた同四拾弐文とあれば、右同時代と知られたり、さらば慶安年中の引札なるべし、