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今川大双紙

酒に付て式法の事一せんぢやうへの酌の事、てう〳〵二度して扠つぐべし、大将に大指のさきおむけべからず、酌取人もか用の人もしらざる事お嫌也、〈○中略〉一酌に上かい下かいと雲事、右の手お先へ左お跡にして、銚子の柄お執べし、左の大指お右の手の下に成やうに取べし、上へなる様にとれば、さか手に見えてわろし、心得べし、銚子のぎぼうしに、大指お懸るはわろし、ぎぼうしのきわせめの有まはりおば、上手にて取べし、一客人酌などさめるゝ事有ば、つぎ酒の提おも其供の人に渡べし、又よ所へ主人の供に行て、其座につらなりて、主人酌めさるゝ事あらば、提お所望して持て畏べし、主人の酌など御取りあるおよそに見ること有べからず、是は人のひくわんの身にかぎらず、兄酌おとらば弟提お取て其躾お、ふるまふべきなり、〈○中略〉一児女房男の酒うくる事、児女房は下へさげべし、男は盞おあげべし、是は酌取は盞おさぐるにおしてもらぬ事也、出家も侍もおしてもる事、ひけふぶしつけ也、