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大草殿より相伝之聞書
一三星(○○)拵之事、星の台お我前へ酌持てこへられたる時、礼儀いつものごとく、自然先はじめ候へば、左右お見合て、三星の中の盃お取おろし、我左の盃おとりて、三ぼしの台の上にて酒おうけ候、そばにて酒お請てのみて、盃の下おば右の方の盃に入て、其盃おば台の上以前の所に置て、又右の盃お取て酒おうけてのみて、盃の下おば台の下におろしたる盃に入て、又台盃おば以前の所におきて、又とりおろしたる盃に酒お請て、恐惶の人には酒おたべて、貴人の御前に盃お持て参り、いたゞきて手渡しに申也、台の盃二つは、酌取候人持てまいられ候、一三つぼし等輩よりさゝれたる時は、中の盃おいたゞきて、左の盃にかさねて、酒おうけてかさねながら下に置て少のみ、下の盃にうつし、上の盃おば台のそばにおきて、うつしたる酒お又のみかけて、右の方の盃にうつし、先の盃おばほしの上に、已前の所に置て、又右の盃の酒おのみて、其盃又以前の処におく、其後におろしたる盃おいたゞき、中におきて人にさし候、恐惶の人には已前のやうに持参してよし、等輩には台の上にすへてさし候、此分は下戸の仕合に候、上戸たりとも、先此分に仕候て、人によりしいられ候へば、又三ぼしにて一つづゝ三つたべ候時は、最前の仕合たるべく候、又盃おはじめ候とき、人よりおさへ物給候時は、我右の方の盃おたべ候時、はさみ物あるべく候、其時は酒おうけて台の下に置て、はさみ物おうけとりいたゞき、集養して御酒おたべ候、又等輩よりさゝれたる時は、中の盃お請てたべて、我左の盃おたべ候時、はさみ物あるべく候、其時も盃の台のそばに置て、はさみ物おいたゞき、たべて御酒おたべ候、一五つ梅(○○○)の拵の事、自然はじめさせられ候へば、礼義いつものごとく、扠五つの中の盃お取おろし、台のそばに置て、さて我左の方のはしの盃お、その方の内の盃にかさねて酒おうけ、かさねながら酒おのみかけて、下の盃に入て、上の盃お又下にかさねて、皆酒おのみかさねながら、台のはしにおきて、又右の方のはしの盃お取て、其方の内の盃にかさねて、酒おうけて是ものみかけて、又下の盃に入て、上の盃おば下にかさねて、入たる酒お皆のみて、かさねながら台の右の方のはしにおきて、先の中の盃おばのまずして、台にすへて人にさし候時、両方かさねたる盃お、左右の手にて取て、前のごとく五つ梅の上にならべておき候時、中の盃お頻に人よりたべよと申され候とも、しんしやく申候てさし候へば、其時人nanはさみ物にても、おさへ物にてもあれ、いだされ候時、取ていたゞき、くい候共、懐中候共、時宜によるべく候、又中の盃お取て、其時たべ候、しいられ候へば、時宜よき程たべ候て、恐惶の人ならば、台は酌取候人持て参られ候、其盃一つ我持参申す也、等輩ならば中の盃はのみて、いたゞきて台に置て遣す也、