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江戸買物独案内

〈仙伝一家〉酒禁丸〈藤田氏製〉夫酒は養寿の奇品と雖ども、多く喫する時は気お慓し、行お敗り心お乱、甚しきは家邦お喪す、軽ければ病お致し命お隕す、故に長寿は下戸に多し、慎むべし、〈○中略〉此薬お用ゆる時は、胸中の酒癖おさる故に、上戸と雖ども酒お飲んとするの心疎くなりて、自然と下戸となる也、又大酒豪飲の人も、三両杯の楽酒となりて、身の害おなす事なし、吐血お止め胃熱お清し気血お行し、胸腹の留飲おさり、歯おかたくし、目お明にし、ざくろ鼻お治し、内損お補ひ、若癩、中風、よい〳〵、水腫、黄胖、総て酒より発る病治せずといふ事なし、酒ぐせのわるき人需服すべし、売弘所 〈日本橋通三丁目東側中程〉藤田屋熊治郎製