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一話一言
十一
一奥州会津領の内に大塩村といふ所あり、山間の川傍に邪が井、姥が井といふ二つの井あり、其井水お沙にそゝぎ、焼て塩となす、其塩色潔白にして軽く味よし、二井邪が井はやや淡く、姥が井は濃なり、長左衛門といふ百姓其井の主たり、其家の祖のために、僧空海呪書てあたふといふ、今に空海の像と並邪姥の二像あり、これ王右軍帖といへる蜀の塩井也、大塩村お上れば、ひばら沢といふ所に出といふ、