[p.0817][p.0818]
塩尻

伊勢物語に、富士の形おしほじりのごとしといへり、歌人其夕じりお秘とす、予海浜に遊びて、塩竈の煙お見しに、海民塩お焼くに沙おあつめて堆おなし畦お作す、潮水来りて砂畦おひたす、〈所によりて潮お汲て砂畦おひたす〉日々にかくして後沙おつみ、山様おつくり日に曝す、これお塩尻といふ、実に富士の形に似たり、海辺の俗語にて秘とする事、あながちあらざれども、歌客京に居り、遠海の事にうとく、時さりてしる人なく、偶につたへしもの、秘して是お伝へしにこそ、