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江戸名所図会
二十
塩浜 同所〈○行徳〉海浜十八箇村に捗れりと雲、風光幽趣あり、土人雲、此塩浜の権輿は最久しく其始おしらずといへり、然に天正十八年、関東御入国の後、南総東金へ御遊猟の頃、此塩浜お見そなはせられ、船橋御殿へ塩焼の賤の男お召し、製作の事お具に聞し召れ、御感悦のあまり、御金若干お賜り、猶末永く塩竈の煙絶ず営て、天が下の宝とすべき旨、均命ありしより以来、寛永の頃迄は、大樹東金御遊猟の砌は、御金抔賜り、其後風浪の災ありし頃も、修理お加へ給はるといへり、〈事跡合考に雲、此地に塩お焼事は、凡一千有余年にあまれりと、〉