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瓦礫雑考

醤油大和本草に俗に醤油と称するは豆油也、順和名抄に、豆油おたまりと訓ずるは非也雲雲といへり、和名抄に豆油おたまりと訓ぜる文なし、必誤なり、また豆油も醤の一方なれば、しやうゆと訓ぜるも、、大に誤れるには非ざれ共、本草お考ふるに、今染家に用るまめのごおも豆油といへれば、同名にてまぎらはし、かつ醤油といふ漢名なからましかば、仮にしやうゆお豆油とも書まし、既にさる漢名ありて、本草彙言また伝家宝に、その法までも出たるよし、小野氏の本草綱目啓蒙にいへり、又この外諸書に醤油の名見えたれば、豆油と書はわろし、醤油のこと、こゝには、むかし無きものなり、庭訓往来、下学集には未記さず、節用集に始てその名見えたり、古は醤お用ひしなるべし、