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万金産業袋
六酒食
醤油大抵売用しやうゆの仕こみやう、小麦壱石、よく焙てざつと引わり、白豆壱石、味噌のごとくよく煮て、右の小麦と一つにかきまぜ、かうじ蓋にいれねさせ、花のあがりたる時、水弐石に塩八斗〈但四合塩の割也〉いれ造りこみ、毎日々々匕にてまはし、日数六十日nan末は久しきおよしとす、酒は寒造とて、寒き時造りこむお専とす、醤油は夏土用の中に仕こみ、秋の末に至りて上るおよしとす、右の通にしてそのまゝしぼりあぐれば、右麦、白豆、水の升目にて、しやうゆ弐石六七斗づヽ出る、是は麦と豆nanもその滴出るゆへ、水の升目に増する也、是お此まゝにてつかふ時は、生じやうゆ(○○○○○)にて、風味よくかろく、何程に暑気の時も、少も醭出ずよろしけれ共、今当代のねだんにては、中々売当にあはねば、中古nanもどし(○○○)といふ事お仕出す、酒屋のふんごみ粕三貫目に、水壱斗塩三升いれ、よく煮立れば、どびろくのごとくなる、それおよくさまし置、しやうゆ壱斗の中へ、右のもどし四升か四升五合の割お以て、醨の中へいれ、袋にいれ、しめ木にてしぼる、しぼりやう船のこしらへやう、大概酒に同じ、又もどしにもち米弐升おこはいいにむして麹にねさせ、水壱斗に塩三升入せんじ、右のもちかうじおいれ、もろみにして、右粕のもどしの積にいれてしぼる也、此ゆへに今此ごろのしやうゆ、いかにも風味よく色よくても、夏の季に入梅雨などのころほひは、しろく醭のいづる事あり、是まつたくもどしのわざなるべし、二番(○○)お取は冬計也、たとへば、しやうゆ弐斗取し跡へならば、水壱斗に塩三升いれて、右しぼりあげし粕お打こみ、匕にてよくかきまぜ置、三十日計して、一番の通にしあぐる、又少しよきにはかうじ三升お、右の水へいれ、かうじながらしやうゆの実にまぜてしぼる、二番の水はざわ〳〵と、一せんじ煎じているゝ事よし、塩は赤穂麦わら塩、島塩等およしとす、たまりじやうゆ(○○○○○○○)は、大麦一斗煎て引わり、黒大豆壱斗よく煮て、右の大麦と一つにしてねさせ、麦一斗に、水八升、塩弐升五合の割にて仕こみ、日数も大やう七十五日、あげやうは常しやうゆに同じ、其外溜りじやうゆの仕やう一概ならず、家々の調方、国所の風による、少しづヽのわかちも有、大略は右のごとし、元来が大麦にて黒豆なるゆへ、重からずもたれげなく、いかなる病人へも許す事、右の調方ゆへなるべし、造酒製法醤油造之法一もやし 最初は米もやしお用、後者友もやしお用る事、 但米もやしと唱候は、酒に用るもやしに而、京大坂江戸等、市中に商売人有之、右に而買入候事、友もやしと唱候は、醤油之糀お用るお、友もやしと雲ふ、委敷は奥に記す、一糀仕法 一と仕入申唱候は、小麦壱石大豆壱石合弐石也、〈○中略〉一仕込之法仕込桶へ清水お弐石汲入、塩壱石入、〈五合塩の積り〉あめ七斗五升、〈是は大豆お煮候煮汁也〉右あめに塩三斗入、〈あめに四合塩の積り〉但右あめは釜nan樽へ取能冷し置也、右水に塩あめお入置、其上へ前書之糀お入能交置、但右仕込之醤油、毎日両度宛櫂お以能々交可申事、猶絞揚之儀者、弐け年三け年過候而、諸味能潰色濃くなり候程味よろしく、併醤者品に奇、春仕込と申て、三月頃暖気に相成候時節に仕込いたすも有之候得共、元来塩に而仕込可致品ゆへ、五月に至り薄暑に趣仕込に取掛り、遅く八九月頃迄に終り可申事、猶百姓向手造之醤油お用る者は、五月頃仕込いたし、同年九月又は十月に至り、絞り揚候もあり、右に而も随分味は宜敷物に候得共、何分熟味行届兼候品故、塩辛き醤油に而、元附之割より品柄不宜候事、右諸味二夏又は三夏過候而、能熟味いたし候、醤油絞り揚之仕法左に、仕込桶壱本 此仕入五仕入と見て、此仕込石拾石、右仕込桶へ戻きと唱て、米壱石、 但右壱石之内九斗糀にして、壱斗粥に焼き、右糀と交合、一日一夜置ば、甘露之如く能き甘酒に成る也、右甘酒に清水凡三石、内壱石は粥お焼き候節、壱斗之米へ入粥に焼き、残弐石お湯に焼き、能煮候湯之中〈江〉、右之甘酒お入、又熱立候迄焼き、此薄甘酒お半白桶へ取一夜置、折々櫂お入能冷し候而、右之諸味之中〈江〉打込、能々櫂に而交合し、夫より右諸味凡五石宛、船場之小出し桶へ汲出し、此儘絞り揚げ候分は極上醤油也、中品は右船場之小出し桶に而、諸味五石之中へ二番醤油お、壱石五斗入て絞り揚げ候事、但二番醤油之儀者奥に記す、猶右中品と申分、大坂に而壱升に付凡壱匁三四分に売候分、下品は右中品に絞り揚候後、釜に而火入之節、醤油壱石に、二番汁弐斗弐升づヽ入交合せ、火入いたし候事、 但此分大坂に而、壱升に付壱匁弐分位売候分、二番醤油○○○○仕法壱番醤油絞り揚げ之粕、船一艘分に清水三石と塩三斗入、能々櫂に而交、一夜置、翌日絞り揚候事、 右絞り揚候醤油者、何れも入口に而能澄し候而、火お入可申事、 但火の入様は、釜に而能焼き、熱えかやり候お汲取、又桶〈江〉入置也、