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日本永代蔵

銀のなる木は門口の柊♯援に越前の国敦賀の大港に、年越屋の何がしとて、有徳人所に久敷住なれて、味噌醤油おつくり、はじめはわづかなる商人なるが、次第に家栄ける、世の万にかしこく、分限に成そも〳〵は、山家へ毎日売ぬる味噌お、いづれにても小桶俵お拵へ、此費かぎりなし、時に此親仁工夫仕出し、七月玉祭の棚おくづして、桃柿瀬々お流るゝ川岸に行て、捨れる蓮の葉お拾ひ集め、一年中の小売味噌お包めり、この利発世上に見習ひ、是につゝまぬ国もなし、