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重修本草綱目啓蒙
二十二蓏
甘蔗 さとうきび さとうのき さとうぐさ さとうだけ 一名瑶池絳節〈事物異名〉 庶草〈同上〉 黄金顙〈事物紺珠〉 藷蔗〈通雅〉 甘藷〈同上、同名あり、〉 〓〓〈同上〉 干蔗〈女南甫史〉 甘〓〈正字通〉 諸柘〈文選註〉 杖蔗〈福州府志〉 自然汁、一名蜜汁、〈行厨集〉 消酔〈同上〉♯甘蔗、品類多し、享保年中琉球の産薩州より来り、今諸国に多く栽ゆる者は荻蔗なり、苗形荻に似たり、故におぎ様(で)のさとうきびと呼ぶ、形状蜀黍の如くにして、葉微狭し、苗高さ丈余にして葉互生す、其茎大にして竹の如し、皮堅く穣柔にして、蜀黍稭の如し、本は節蜜にして、梢に至り漸く長し、此草は葉のみにして、花実お生せず、十月已後根お去り、茎お収め、土窖の中に蔵め、寒お避く、三月に至て採り出し、節お中にして切り、陽地に栽ゆれば、節ごとに両芽お生ず、稍長じて、壮なる芽お残し、余は除き去る、夏に至れば傍より数茎叢生す、冬に至り茎の能く熟する者お搾りて、黒沙糖とす、この蔗お糖蔗〈天工開物〉と雲、又飴蔗〈閩部疏〉とも雲、一種茎熟して生食すべくして、搾りて沙糖にならざるあり、是崑崙蔗なり、是お果蔗〈天工開物〉と雲、又食蔗〈閩部疏〉とも雲ふ、世説に顧凱之漸入佳境と雲る者是なり、本は甘して梢は淡し、故に顧凱之梢より食せし故、漸く佳境に入ると雲ふ、蔗の品類は天工開物に詳なり、