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経済要録

諸糕第五♯沙糖昔は舶来のみお用たる者なりしが、近年薩摩にて火しく黒沙糖お作り、讃岐及び尾州長州此れに次ぐ、且讃岐よりは白沙糖お火しく出し、阿州土佐等にて氷沙糖お製す、抑甘蔗は赤道下に蕃衍するものなるが故に、気候の温熱お好み、寒冷お畏る、故に赤道下お距るの遠きに従ひ、漸漸甘味淡し、是寒地に適せざる者なるお以てなり、然れども気候お変通するの術お行ふときは、四十五度許の地までは此れお作るべし、黒糖お製し得るときは、此れお白糖となし、氷糖となすも此れ亦無造作なる者なり、凡甘蔗は甚しく小根の張る者にて、粘埴の土地には決して適はざる者なり、宜く海辺の沙漠に作るべし、沙漠は極て多き者なれば、火しく此れお作るべし、