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日本山海名産図会

生海鼠海鼠腸〈本朝食鑑に、或は俵子と称するといふは誤るに似たり、俵子は虎子の転じたるにて、たヾ生海鼠の義なるべし、〉海鼠腸お取り、清き潮水に洗ふ事数十遍、塩に和して是お収なり、黄色に光り有て琥珀のごとき物お上品とす、黒み交る物下品なり、又此三色相交る物お、日影に向ふて頻に撹まはせば、尽く変じて黄色となる、或は腸一升に鶏子の黄お一つ入れ、かきまはせば、味最も美なりともいへり、往古は此腸お以て貢ともせしかども、能登尾州参河のみにて他国になし、是まつたく黄色なるもの希なればなり、〈又一種腸の中に色赤黄にて、のりのごときものあり、号て海鼠子といふ、味よからず、〉