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嬉遊笑覧
十上飲食
摂津名物の内、雀鮓江ふな也、腹に飯お多く入たるが、雀のごとくふくるれば、かくいふなりといへり、江ふなとは、江戸にておぼこといふいなの子なり、後撰夷曲集、ちよこ〳〵とおどれどへらぬ我腹は飯の過たる雀鰭かも、山井、はねのはへた飯に漬てや雀ずし、〈意朔〉めしのこはきおはねのはへたと雲もふるし、五元集、五月十日、雷雨永代島の茶店にやどりして、明石より神鳴晴て鮓の蓋、〈貞享頃の吟なるべし、此句源氏明石巻、雷雨の事おおもひていへり、鮓の蓋にはむかし傘の紙お用たり、〉思ふに今諺に神なりならねば放つまじなどいふ、此句これなるべし、鮓はなるヽまでは、容易に蓋お開かざるもの故、かみなりによつて、蓋お開くと作れるなるべし、