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嬉遊笑覧
十上飲食
みさご鰭は、みさごは詩経に雎鳩と詠じ、本草には鶚といへり、名物弁解にみさご、本邦古より有之、日本紀〈景行紀〉に覚賀鳥といへり、形鷹に似て深目赤黒色なり、水禽には非ずして、水辺に魚お掠食ふ、或は魚お取貯へ、岸の沙石の間に積置お、みさごの鮓と雲ふ、漁人或は好事の人探得て、不加塩醤して食ふ、味は人の作れる酢に似たりといふ、本草啓蒙に、深山の巌陰に魚お多く積重置お、みさごの鮓といふ、是冬の貯なり、人これお取に、重ねたる下の魚お取れば、追々新に魚お含み来りて積重ぬ、もし積たる上の魚お取れば再び含み来らず、又樹枝の繁茂したる処に、柴お襯してその上に魚お積重ぬるもあり、此等の鮓久しくなりたるも腐らず、人取て賞食すといへり、秋坪新語、忠州山中黒猿善醸酒ことお載、猢猻酒といへり、みさごずしに対すべし、