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守貞漫稿
後集一食類
蒲鉾蒲鉾の古制は、左図の如きこと必せり、〓図の如く魚肉お竹串につけたる也、今世蒲鉾店にて売れるちくわ(○○○)と雲もの、上図の如く竹に魚肉おつけ蒸て後、竹お抜さる也、小口より截之ば、竹輪の形なる故に名とす、是古の蒲鉾に近し、今製の竹輪、右の図の如くす、蓋し外お竹簀お以て巻包み蒸す、〈○中略〉半平(○○)はんべいは蒲鉾と同く磨肉也、椀の蓋等お以て製之、蓋半分に肉お量る、故に半円形お以て名とす、京坂にては半平お胡麻油揚げとなし、号けててんぶらと雲、油お用ひざるお半平と雲也、江戸には此天麩羅なし、他の魚肉海老等に小麦粉おねりころもとし、油揚げにしたるお天ぶらと雲、此天麩羅京坂になし、有之はつけあげと雲、江戸の半平は半円と方形と二種あり、半円お半月と雲、昔は半げつお専とし、近年は角形お専とす、蒲鉾よりは米粉等多く加へて粗製多し、摘入(○○)つみいれ京坂に無之、或人雲、昔はうけいれと雲、鯛肉おすりて小梅実の形に製す、冬は味噌汁に入之て、みぞれの吸物と雲と也、今制江戸にては半平と同品の魚肉也、四季ともに味噌汁等に用之、粗製の膳に用ふる也、大坂にては鱧肉おすりて製之ことあり、常には売らず、需に応て別に製之、多くは自製也、号けてはものすりみと雲味噌汁及び小芋と醤油煮にすることあり、