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東路の津登
翌日〈○永正六年十月二十四日〉市川〈○下総〉といふわたりの、折ふし雪風吹て、しばし休らふ間に、むかひの里にいひあはする人有て、馬どものりもてきて、やがて舟渡りして、あしの枯葉の雪うちはらひ、善養寺といふに落つきぬ、おもしろかりし朝なるべし、此処は炭薪などもまれにして、蘆お折たき、豆腐おやきて一盃おすゝめしは、都の柳もいかでおよぶべからんとぞ興に入侍し、