[p.1008]
倭訓栞
後編六加
かうのもの 唐山にいふ菜脯の類也、菜脯は専ら冬月の蘿蔔お用ふ、香物はもはら茶湯に用ふといへば、慈照院殿〈○足利義政〉のころより起るにやといへり、香のつけぼしにならひてしいでたるおもて名お得たりとも、みそお香ともいふ故に、もとみそに漬たる物より名お得たりともいふ、古にいふ、葅の遺製也ともいへり、されど今木曾路に香の物といふは、生大根にて、供御脇御歯固の蘿蔔蕪も生と見えたり、たくあんづけ(○○○○○○)といふは、沢菴和尚より始るとぞ、奈良漬豊田守口近江などは、所おもて称し、又浅漬甘漬の法あり、