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本朝世事談綺
一飲食
香物相伝ふ、香物は漬干(つけぼし)より出たるもの也、薫物の中へ麁木おうすく片(へぎ)、三四分の大さにして漬浸し、その香気おうつしてこれお焼、漬干といふ也、これにもとづき、瓜、茄子、大根等の野菜お糟粕に蔵し、その好味おうつして茶菓子に用ひたる也、合せ香に漬たるより起るによつて香物といへり、専茶の湯に用ゆとあれば、慈照院殿〈○足利義政〉の時代より起る事か、今口取に用る菓子に比するものか、