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守貞漫稿
六生業
漬物売京坂にて茎屋くきやと訓ず、昔は大根等の茎漬おうりし也、今世は茎のみに非ず、蘿根、蕪菜等の塩一種お以て漬たるおくき(○○)と雲、又大根の根葉ともに細かに刻みて塩漬お刻み茎と雲、蘿根全体のまヽ漬たるお長漬(○○)と雲、瓜茄子等、塩糠二種お以て不日に浅漬(○○)と雲、大根の葉お去り乾て枯て後に塩糠お以て漬たるお香々(○○)と雲、香の物とも雲、原は漬物は香物の総名也、塩漬、糠づけ、粕漬ともに売之、粕漬三都ともに奈良漬(○○○)と雲、〈○中略〉漬物の総名お香の物、又かう〳〵とも雲、塩漬お塩押(○○)と雲、瓜、茄子、大根菜等お押す、蓋全体大根の長漬不製之、刻茎お江戸にて大坂漬(○○○)と雲、原彼地の製お伝へたる歟、蕪亦大なる物なし、故に不製之、近年冬大坂より天王寺蕪お漬け、京都より水菜お漬て江戸の知音に贈る者多し、賈物には希なり、水菜或は壬生菜又は糸菜とも雲、江戸にて二品ともに賞之、京坂にて雲浅漬(○○)は江戸も同名、又同製之、又三都ともに塩糠お以て長日漬たるお糠味噌つけ(○○○○○)と雲、又全大根の葉お去、枯て塩糠お以て漬たる上方のかう〳〵と雲同製の物お、江戸にて沢庵漬(○○○)と雲、品川東海寺の沢庵禅師始て製之、故に名とす、