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黒田故郷物語
瓜の時分は家中町人共より大分指上候、伽坊主小性相詰候者、何も呼出し喰せ候て、皮お削者にも皮おあつくむけと申付候、伽坊圭申けるは、いとヾ小き瓜お厚くむき候はヾ、喰所少く成可申と申ければ、いや〳〵一つにてたらずばいくつも喰、其皮お長持のふたに入よとて、台所賄人お呼出し、あれ成瓜の皮お塩漬にして台所にて食お喰候さいの無者多し、是等のさいにさせよ、総別茄子以下の皮其外野菜の切はづし、魚の骨少も不捨、夫々にこしらへ、さいの無者に喰せよと被申付候により、不断其仕合なれば、塩汁計の者ども、菜も有けると也、