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四季漬物塩嘉言
きざみ漬(○○○○)沢庵大根の茎お干葉にして、多くたくわへおきて、総菜に遣ひ、汁の実にすべし、右の茎の中よりやはらかき若かぶおえりおきてよく洗ひ、小一寸位に刻みて、大根お短冊にうちて、茎と等分にまぜて、醤油樽一杯ならば、塩一升計り入て能もみ、手比なる押石おかけて漬るなり、十余日過てざつと洗ひ、醤油おかけて、当座喰にすべし、なま漬は無用なり、すこしつきすぎたる方がよろし、 大坂切漬(○○○○)〈上方にては、くもじ(○○○)といふ、又くき(○○)ともいへり、〉大根と蕪と等分に、葉茎ともにきざみ込て、醤油樽ならば、塩五合お入て能くもみ合せ、強く押て漬るなり、十余日お経て、ざつと洗ひ、かたくしぼりて、香の物鉢へ入置、菜箸にて自分の喰ほど手塩皿へとりて、別にちいさき片口の器へ醤油お出し置、銘々にかけて喰なり、〈○中略〉上方にては専らすることなり、歯ぎれよく、いたつて淡薄なる風味なり、