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橘庵漫筆
二編一
沢菴漬と雲は、大根にかぎれり、菊岡氏の世事談といえるものに、和尚の製し初られしといえど左に非ずとぞ、沢菴和尚は、但州は産にして、名お宗彭又は冥之と称す、東海寺の開租也、正保弐年九月円寂せらる、墓は一箇の円石のみなり、其石異様にして大根の香の物に似たり、故沢菴漬と香の物の混名なり、和尚は隻近世の人なり、香の物は古くあるべし、世事談の説のごときは、贔屓の引だおしと雲べし、