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四季漬物塩嘉言
奈良漬瓜夏土用の中の極上物の白瓜お吟味して、二つに割て中実お深くとり、瓜の肉にきずのつかぬやう取扱ひ、中へ塩お詰て、天日にほすこと二時計り、塩水おこぼし、とくとさまして上粕に喰加減の塩おあはせ置、粕壱〆匁に大瓜二つおあおのけにして、桶の底には糠に塩少々まぜて、桶の大小に従ひて、厚さ三寸位にしき、中底の板に穴おあけ、水気の下へ落るやうにして、瓜おならべては粕おつめ、瓜とうりと当りあはぬやうになして、ほどよき圧おかくれば、中底の様に水気お吸とりて、瓜のつきやう大にはやし、又茄子は甘塩に塩押して、能圧のきゝたる時に、一日天日に干、さまして後、右の塩かげんの粕に漬置、かろく押おかけて一年立て又粕おとりかへ、元の如くに漬直すこと、瓜茄子共に三年お経て程とす、