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四季漬物塩嘉言
梅干漬梅の実の能いりたるお、一時計り水に浸して洗ひ、梅一斗に塩三升、紫蘇の葉多少見計ひにて漬るなり、はじめは押おかるくして、梅に塩のしみたるに従ひ、段々押おつよくかけるなり、十四五日、又は廿日お経て、日和よき日お見定め、簀へあげて日に干なり、当座喰には一日か二日ほして器にたくわふ、年久しくかこひおくには、一日ほしては夜は梅酸に漬置、又翌日ほすなり、かくすること三日にして、夫より四五日ほしあげて、からびるほどになりて壺に入べし、たとへ十年廿年に及ぶとも、味かわることなし、梅干の艶もよく、風味格別なり、右の梅酸に大根お花に切、又は薄くきざみて、生姜など一所に漬るは、よく人のすることなり、上方にては蓮根と生姜お多くつけて、座禅豆のかやくにも赤い蓮根お用ひ、鮓お漬にはぜひ紅生姜お遣ふこと常の事なり、此梅酸にしそのしぼり汁お入て、徳利にたくわふべし、料理にはおり〳〵入用の物なり、