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柳亭記

かくやの香の物或老人の話に、高野山に隔夜(かくや)堂といふあり、二人の僧、一夜おきに守るが故の名なり、此所お守るは老僧の役にて、多くは歯のうすきが故、隔夜料とて香の物お坊よりきざみておくる、きざみたる香の物おかくやといふは、こゝにおこれりと、按に、和州長谷寺に隔谷堂あり、大和名所図会に見ゆ、彼老人の高野といひしは、おぼえたがひか、又高野にもあるか知らず、